電子レンジで生麩糊 | 2010.11.20版 |
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ここは私/matsu_v6 がYahoo!オークションに出品している干吟(生麩粉)の解説ページです。検索サイトなどから直接訪問された方で興味がある方は、まずこちらの出品一覧をご覧下さい。 ご質問、間違いのご指摘や情報のご提供には関連する出品物の質問欄をご利用ください。なおページの設置目的上、ご利用は商品検討に限定致します。外部からのリンクや転載はご遠慮ください。 出品・落札・終了のタイミングで干吟が出品されていない場合は適当な出品物の質問欄から『干吟は?』と督促してください。その時点でお分けできる余剰ストックがあれば再出品致します。 なお生麩糊(しょうふのり)は正麩糊とも表記され、表具屋さんは新糊と呼び粉物屋さんでは干吟と呼ばれ、さらに別の分野では違う名前で呼ばれ・・・と非常に判りにくいです。ここでは表記ゆれを防ぐため、小麦粉由来の糊の原料となる粉を干吟/炊き込んだ物を生麩糊で統一します(少なくとも私はそのように教わりました ^_^;)。 |
生麩糊とは小麦粉から作られる生麩糊は、素材を傷めない、強力な接着力がある、100年単位の耐久性がある、必要時には水刷毛で簡単に剥離できる等の優れた特性をもった日本古来の糊(舌切り雀が食べちゃったアレ)です。紙と紙、竹/木と紙を接合する最良の糊と考えられています。 しかし、通常は釜で大量に炊き込んで作るため一般家庭で使うには多すぎ、そもそも上質な糊を素人が炊き込むのはかなり困難です。その一方で防腐剤など余分な成分を一切含まないため日持ちがせず炊き上がった糊が販売されることもありません。結果的に高級な表具店や古美術品・古文書の修復所など自前で炊き込める特殊な場所でのみ使用されてきました。 優れていることは判っても一般人では手が出しにくい生麩糊ですが、最近では干吟を材料に電子レンジで少量を手軽に作る方法が考案されています。 なお、お湯だけで作れる様に干吟を加工(完成糊を乾燥?)した製品や日持ちのする完成品がホームセンター等で販売されている事がありますが、素材を傷め将来の劣化変質の原因となる防腐剤や可塑剤などの化学物質を含む時点で生麩糊のメリットは失われており、事実上それは合成糊であると私は思います。 |
作り方 | ||
干吟10g、水40cc、電子レンジ可の器とキッチングローブ(布巾でも可)を用意します。 より純粋な水が望ましいのは当然ですが、飲料に耐えるものであれば水道水でも特に問題ありません。量はできるだけ正確に量ってください。 器は透明な方が内部の状態が確認できて作業は楽ですが、加熱沸騰時に吹きこぼれない深さと容積があればマグカップなどでも作れます。
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干吟を水で撹拌すると白濁した液になります、ほとんど溶けません。これを電子レンジの調理(機種によって加熱や強)モードで30秒間加熱します。もしも吹きこぼれるようなら、大きい器と取り換えて下さい。
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加熱すると粉っぽい糊モドキになりますから、冷めない様に素早く撹拌します。特に粉が溜まりがちな底の方を中心に満遍なく混ぜて下さい。
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さらに調理モードで30秒間加熱すると、ツヤと透明感のある糊になります。
冷めないうちによく撹拌し、容器からはぎ取って固まりにします。後は容器を流水に
漬け(つまり湯煎の逆)冷めたら出来上りです。
ほかにも、干吟10gに対し水50ccを加えて撹拌、電子レンジで10秒間加熱して撹拌、 この加熱と撹拌を状態を見ながら繰返す方法があります。より良好な糊が得られる ような気もしますが、私自身が状態を見極められない事、30秒×2でも十分 な品質が得られる事からこちらの方法は使っていません。 |
保存方法出来上がった生麩糊はその日のうちに使い切るのが理想ですが、1週間程度なら冷蔵保存が可能です。糊が冷めたら直ちに密閉できる容器(ラッピングでも可)に移して冷蔵庫へ、そこから必要量を取出して使えば良好な状態を長持ちさせることができます。 糊の劣化は匂いで判断します。作りたての糊は炊立てご飯のような良い匂いがし、接着力は抜群です。そこから糊は日々劣化し生臭くなり、接着力が落ちていきます。 劣化した糊でも頑張れば使えますが、耐久性が非常に低く月単位で剥離してしまい、素材への悪影響も考えられます。さらに、落ちた接着力を無意識に量で補填してしまう(塗りたくる)可能性も高くなりますので、1週間を目安に臭いと感じたら潔く廃棄して下さい。 |
使い方作った生麩糊をそのまま使用することはまずありません。通常、粘度(濃度)と接着力を水で調整してから使用しますが、その際に最初から大量の水と撹拌すると接着力も耐久性も得られません。面倒でも以下の手順でじっくり調整してください。 | ||
生麩糊を少量、小さ目の角砂糖程度を小皿に取り、水を付けた木箆(きべら)で擂り潰すように練ります。時々、箆に水を付け、糊に水を含ませながら練っていきます。最初は弾力と粘着性がありますが、しだいにさらっとしたゲル状になります。
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均一なゲル状になったら、スポイトなどで少しずつ水を加えながら腰の強い刷毛で練ります。必要な粘度になるまで水を加え練り続けますが、液状になっても刷毛でしごくようにシツコク練って下さい。
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目的によって粘度は異なりますが、本の補修など紙同士の接合の場合は筆先から水のように垂れる直前がベストで、画像でわかるように底が透けるようなかなり薄い状態です。
調整した糊の状態は刻々と変化していきますから、水を加える・刷毛でしごくなど使用中も微調整を行います。作業中に少しでも手が空いたら取敢えず刷毛でしごいて下さい。そうすることで接着力が維持されます。 使ってみるとわかりますが、調整した生麩糊に粘着性はほとんどありませんから、合成糊のように張り合わせ=接合とはなりません。薄く糊を塗り張り合わせたらいらない紙で余分な糊を吸い取り、半乾きになるまで手で押さえる、重石をかけるなどして乾燥を待ちます。強力な接着力が発揮されるのは乾燥後です。失敗した場合は水刷毛でなぞる(平たく言えば水をつける)ことで分離できますから、何回でもやり直し可能です。 調整した糊は夏場なら半日、冬でも1日で劣化し使えなくなります。生臭いと感じたらもう劣化していますので、それは捨てて新しく調整してください。当然のように使い残しも保存はできませんから廃棄です。 |